HTTPSとは? 鍵マークが守っているもの・守れないもの

約14分 · 更新: 2026年10月23日

HTTPSは、Webのやり取り(HTTP)を暗号で守って送る方式です。途中で盗み見られない、書き換えられたら気づける、相手が本物のサイトだと確かめられる、の3つを守ります。ただし鍵マークは「通信が守られている」印にすぎず、サイトが信頼できるという意味ではありません。

この記事でわかること

  • HTTPとHTTPSの違いと、HTTPSが守る3つのこと
  • 初対面のブラウザとサーバが、秘密の鍵を共有するしくみ
  • 証明書と認証局が、相手が本物かを確かめるしくみ
  • 鍵マークがあっても守れないこと

前提知識: 特にありません。「インターネットでデータが届くしくみ」を知っていると、より読みやすくなります。

身近なところでは

ブラウザでWebページを開くと、アドレスが「https://」で始まることがあります。ネットで買い物やログインをするとき、「鍵マークを確かめましょう」と教わった人もいるでしょう。

ところが最近のChromeでは、アドレス欄から鍵マークが消えています。一方で、鍵マークのついた偽サイトにだまされる被害も起きています。鍵マークは何を守っていて、何を守っていないのでしょうか。この記事では、そのしくみを順に見ていきます。

HTTPとは: 「ページをください」という会話の決まり

ブラウザは、ページを表示するとき、サーバに依頼を送ります。サーバとは、求めに応じてデータを渡すコンピュータです。「このページをください」「はい、どうぞ」という会話の形を決めた決まりごとをHTTPと呼びます。

HTTPの会話は、そのままでは誰でも読める形で送られます。インターネットでは、データは小さなかたまりに分かれ、たくさんの機器に中継されて届きます。途中の機器や、同じWi-Fiにいる人は、読もうと思えば中身を読めてしまいます。中継のしくみは「インターネットはどうやってデータを届けるの?」で説明しています。

HTTPSの「S」は、Secure(安全な)の頭文字です。会話の中身はHTTPと同じで、その会話を他人に読めない形に包んで送ります。包むための決まりごとをTLSと呼びます。つまりHTTPSは、「HTTPをTLSで守ったもの」です。

TLSの前身は、1990年代にNetscape社が作ったSSLという方式です。SSLは弱点が見つかって使われなくなり、改良を重ねたTLSに置きかわりました。「SSL証明書」のように、古い名前は今も残っています。

HTTPSが守る3つのこと

通信の心配ごとは、大きく3つに分けられます。情報セキュリティでは、これを「盗聴・改ざん・なりすまし」と呼びます。HTTPSは、この3つにそれぞれの対策を持っています。

心配ごと例HTTPSの対策
盗聴(盗み見)入力したパスワードを読まれる暗号化
改ざん(書き換え)表示される振込先を書き換えられる書き換えの検出
なりすまし偽のサーバが本物のふりをする証明書による確認

暗号化とは、決まった手順と「鍵」を使って、データを意味の読めない形に変えることです。正しい鍵を持つ相手だけが、元に戻せます。鍵の正体は、とても長い数です(ここでは計算の中身は省きます)。

書き換えの検出では、送るデータのひと区切りごとに、鍵を使って計算した短い確認用の値を添えます。途中で1文字でも変えられると、受け取った側で計算が合わなくなります。そのときは、つながりそのものを打ち切ります。

3つ目の「相手が本物か」は、後で説明する証明書で確かめます。まずは、暗号化に使う鍵をどう用意するかを見ていきましょう。

初対面の相手と、どうやって鍵を共有するのか

暗号化と元に戻す処理に、同じ鍵を使う方式を共通鍵暗号と呼びます。計算が軽いので、大きなデータも速く暗号化できます。ただし、ブラウザとサーバは初対面です。鍵をそのまま送れば、途中で盗み見られてしまいます。

この問題を解いたのが、公開鍵暗号の考え方です。対になった2つの鍵を使い、一方は誰に見せてもよい「公開鍵」、もう一方は本人だけが持つ「秘密鍵」にします。公開鍵から秘密鍵を割り出すことは、今のコンピュータでは現実的な時間でできないように作られています。

今のHTTPSの主な方法では、鍵そのものは送りません。ブラウザとサーバは、それぞれ使い捨ての秘密の数を手元で作ります。これが秘密鍵にあたります。そこから計算した「見せてもよい材料」(公開鍵にあたるもの)だけを、互いに送り合います。相手の材料に自分の秘密を組み合わせると、両方で同じ鍵ができあがります。

途中で材料を盗み見ても、手元の秘密がなければ同じ鍵は作れません。この方法を、考えた2人の名前からディフィー・ヘルマン鍵交換と呼びます。1976年に発表された考え方がもとになっています。できた鍵は、そのあとの共通鍵暗号に使います。重い計算は最初だけにして、本番の通信は軽い共通鍵暗号で行うわけです。

証明書と認証局: 相手が本物かを確かめる

話している相手が本物の「example.com」だと、どうすれば確かめられるでしょうか。そこで使うのが「証明書」です。証明書は、サイトの名前と、そのサイトの公開鍵の組を書いた、電子的な身分証です。

証明書には、発行した機関の電子的なはんこが押されています。これをデジタル署名と呼びます。署名は発行した機関の秘密鍵でしか作れず、誰でもその機関の公開鍵で確かめられます。証明書の中身を1文字でも変えると、確かめたときに合わなくなります。

証明書を発行する機関を認証局と呼びます。認証局は、申し込んだ人がそのドメイン(サイトの名前)を本当に管理しているかを確かめてから発行します。ブラウザやOSには、信頼する認証局の一覧が最初から組み込まれています。ブラウザは署名を順にたどり、この一覧にたどり着けるかを確かめます。

ルート認証局が中間認証局に、中間認証局がサイトに証明書を発行する。ブラウザは署名を下から順にたどって確かめる ルート認証局 OS・ブラウザに入っている 署名して発行 中間認証局 署名して発行 サイトの証明書 名前 + 公開鍵 ブラウザは下から順に確かめる
証明書は、信頼の起点になるルート認証局から、署名のつながりで保証されます。ブラウザは、サイトの証明書から上へ署名をたどります。省略していること: 有効期限や、取り消された証明書の確認。中間認証局が2段以上ある場合。

ただし、証明書は誰でも見られる公開の情報です。そのためサーバは、証明書を見せるだけでなく、対になる秘密鍵を持っていることも示します。具体的には、その場のやり取りに秘密鍵で署名して送ります。ブラウザは、開いたURLと証明書の名前が合うかや、期限が切れていないかも確かめます。どこかに問題があれば、警告を出して接続を止めます。

以前は、証明書の多くは有料で、手続きにも手間がかかりました。そこで、無料で自動的に証明書を発行する認証局「Let's Encrypt」が作られました。2015年9月に、最初の証明書を出しています。運営するのは米国の非営利団体ISRGです。2025年末には、約7億6,200万のサイトがその証明書を使っていると報告しています。

つながるまでの流れ

ここまでをまとめると、HTTPSでつながるときには、次のことが起こります。図は、2018年に規格になったTLS 1.3という版を、簡単にしたものです。

ブラウザとサーバが鍵の材料と証明書を送り合い、証明書を確かめ、同じ鍵を計算してから暗号化した通信を始める ブラウザ サーバ ① 鍵の材料 ② 証明書と鍵の材料 (サーバの署名つき) ③ 証明書を確かめる ④ 両方で同じ鍵を計算 ⑤ その鍵で暗号化して通信 鍵そのものは送らない
①〜④の準備は、1往復のやり取りで済みます。省略していること: 準備の前のTCPのあいさつ、使う暗号の種類を決めるやり取り。①に入るサイトの名前(後で説明するSNI)。実際には④の計算は②の途中で済み、証明書もその鍵で暗号化されて届きます。

準備が終わると、「このページをください」というHTTPの依頼と返事が、できた鍵で暗号化されて流れます。ページを開くたびに、この準備を毎回最初からするわけではありません。一度作った情報を使い回して、準備を短くする工夫もあります。

鍵マークがあっても守れないこと

1. サイトが信頼できるかどうか

鍵マークが示すのは、「この名前のサイトと、暗号で守られた通信ができている」ことだけです。だます目的のサイトでも、自分で取ったドメインなら証明書を取れます。実在の会社などを装い、偽のサイトでパスワードなどを入力させる詐欺をフィッシングと呼びます。

フィッシング対策の団体APWGの報告では、HTTPSを使うフィッシングサイトは2018年10〜12月で約47%でした。2020年7〜9月には約80%に増えています。見るべきなのは鍵マークではなく、アドレス欄のドメイン名が本物かどうかです。メールやSMSのリンクから開かず、ブックマークや公式アプリから入るほうが安全です。

2. 届く中身が安全かどうか

HTTPSは、運ぶ途中を守るだけで、運ぶ中身は調べません。ウイルスなどの悪いプログラムも、暗号化されたまま届きます。また、届いたあとのデータの扱いは運営者しだいです。サーバから個人情報が漏れる事故は、HTTPSでは防げません。

3. どのサイトを見ているか

HTTPSで隠れるのは、ページの中身と、URLのうちドメイン名より後ろの部分です。例えば「example.com/account/」なら、「/account/」の部分は暗号化されます。入力したパスワードや、ログインの状態を保つための小さなデータ(Cookie)も守られます。

一方、通信相手のIPアドレス(機器の番号)は、届けるために見えるままです。通信の量や時刻もわかります。さらに、サイトの名前(ドメイン名)も、多くの場合は途中から読み取れます。理由は2つあります。

1つは、名前から番号を調べるDNSの問い合わせです。この問い合わせは、昔からの方式では暗号化されずに送られます。

もう1つは、暗号化の準備のときに、ブラウザが「つなぎたいサイトの名前」を伝えることです。1台のサーバが多くのサイトを受け持つことがあるため、この情報が必要になります。この欄をSNIと呼び、これまでは暗号化されずに送られてきました。

HTTPSでも途中から見えることがあるもの(IPアドレス、サイトの名前、量と時刻)と、隠れるもの(ページの中身、URLの後半、入力内容) 途中の機器から見ると 見えることがあるもの ・相手のIPアドレス ・サイトの名前(DNS・SNI) ・通信の量と時刻 HTTPSで隠れるもの ・ページの中身 ・URLのドメイン名より後ろ ・入力したパスワードなど
鍵マークがあっても、「どこと通信しているか」は多くの場合わかります。省略していること: DNSやSNIを暗号化する新しいしくみを使った場合(本文)、会社の検査装置がある場合(本文)。

どちらも隠す技術はあります。DNSの問い合わせを暗号化する方式には、DNS over HTTPSなどがあります。SNIを暗号化するECHも、2026年3月に規格になりました。ただし、使われるかどうかは、ブラウザやサイト、ネットワークの設定しだいです。今のところ、「HTTPSなら、どのサイトを見たか誰にもわからない」とは言えません。

会社のネットワークには、もう一つ注意点があります。会社によっては、社員のパソコンの「信頼する認証局の一覧」に、会社独自の認証局を加えます。そのうえで、HTTPSをいったん解いて中身を検査する装置を途中に置きます。ウイルスや情報の持ち出しを見つけるためです。この場合、鍵マークが出ていても、会社の装置は中身を読めます。

ブラウザの表示も変わってきた

Googleは2023年5月、Chromeのアドレス欄の鍵マークを別のアイコンに替えると発表しました。つまみが並んだ形の、設定を表すアイコンです。2023年9月のChrome 117から、この表示になっています。理由の1つは、鍵マークが誤解されていたことです。Googleの2021年の調査では、鍵マークの正確な意味を理解していた参加者は11%だけでした。

もう1つの理由は、HTTPSが当たり前になったことです。今は、HTTPSであることより、HTTPSでないことを知らせるほうが役に立ちます。ChromeはHTTPのページに「保護されていない通信」と表示します。さらにGoogleは2025年10月、ある設定を最初から有効にする計画を発表しました。HTTPSでない公開のサイトを初めて開く前に、確認を求める設定です。2026年10月のChrome 154から、すべての利用者で有効にする予定としています。

よくある誤解

誤解: 鍵マークがあるサイトは、安全で信頼できる

実際は、鍵マークが示すのは「その名前のサイトと、守られた通信ができている」ことだけです。偽のサイトでも証明書は取れます。HTTPSのサイトがまだ少なかったころ、「鍵マークを確かめて」と広く呼びかけられたことが、誤解のもとになっています。

誤解: HTTPSなら、どのサイトを見たかも誰にもわからない

実際は、相手のIPアドレスは見えますし、サイトの名前もDNSやSNIから読み取れることが多くあります。隠れるのは、ページの中身やURLの後半、入力した内容です。社内のネットワークでは、会社の装置が中身まで検査していることもあります。

誤解: HTTPSでは、共通鍵をサーバの公開鍵で暗号化して送っている

実際は、それはTLS 1.2までの版で使えた方法の一つです。TLS 1.3では、この方法はなくなりました。公開鍵の技術で鍵を用意するときは、材料を送り合って同じ鍵を作る方法だけです。古い方法では、サーバの秘密鍵が後で盗まれると、記録された過去の通信まで読まれるおそれがあったからです。

ただし、試験の答えが間違いになるわけではありません。「公開鍵の技術で鍵を用意し、本番は共通鍵暗号で送る」組み合わせを、資格試験では「ハイブリッド暗号方式」と呼びます。教科書でよく見る「共通鍵を相手の公開鍵で暗号化して送る」形は、その基本形として正しい説明です。変わったのは、今のHTTPSでの鍵の用意のしかたです。

数字で見る

項目数字時点・出典
Chromeで、HTTPSで開かれたページの割合2015年は約30〜45%、2020年ごろから約95〜99%(OSなどで差がある)Google(2025年10月の発表)
Let's Encryptの証明書を使うサイト約7億6,200万2025年末、ISRG
HTTPSを使うフィッシングサイト約47%→約80%2018年10〜12月→2020年7〜9月、APWG
鍵マークの意味を正しく理解していた参加者11%Googleの2021年の調査
証明書の有効期間の上限200日→100日→47日2026年3月・2027年3月・2029年3月から、CA/Browser Forumの決定(2025年)
TLS 1.3の準備にかかるやり取り1往復TLS 1.3の規格(2018年)

ほとんどのページがHTTPSで開かれる今、鍵マークで見分けられるのは、残りわずかなHTTPのページだけです。だからこそ、鍵マークの有無より、ドメイン名を確かめる習慣が大切になります。

証明書の期限が短くなる理由の1つは、問題のある証明書を取り消すしくみが、いつも確実には働かないことです。期限が短ければ、秘密鍵が盗まれたり、ドメインの持ち主が変わったりしても、古い証明書を使える期間が短くて済みます。

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